再帰反射材とは

再帰反射材とは

夜道を歩いたり車を運転したりしていると、光に照らされて明るく光るものを見たことがあるのではないでしょうか。

代表的な光るものといえば、道路標識があります。

道路標識は自ら光を発しているのではなく、道路標識に使われている素材が光を反射させることで、明るく光って見えています。

その素材は通称、反射材やリフレクターと呼ばれるものです。

道路標識の他に、自転車のペダル、警備員のベスト、消防士のユニフォーム、スポーツウェアなど・・・

普段あまり意識しないけれど、路上に設置されているものや衣料品など、身近なところで反射材は利用されています。

実は、それらの反射材は「再帰反射」という特殊な反射現象を用いたものなんです。

 

そもそも、光の反射とは何か

光が物体に当たると、物体の表面で光がはね返る現象です。

光の反射現象には大きく分けて、鏡面反射と乱反射があります。

鏡などのツルツルした物体の表面に当たると、反対の角度に向かって反射します。

凹凸のある物体の表面に当たると、バラバラの方向に拡散して反射します。

反射によってものが見える

私たちに見えている色や形は、太陽や電灯などの光が物体の表面に当たって反射した光の情報です。

反射によって目に届いた光の情報が脳に伝達され、像として認識されます。

ほとんどの物体の表面には凹凸があるので、多くは乱反射によって見えていることになります。

夜の視認性

夜は太陽という強力な光源(光を放つもの)がないため、暗くなり、街灯や車のライトが光源となりますが、照らすことができる距離や範囲は限られてしまいます。

光が少ないと反射する光の情報も少なくなるため、昼に比べると夜の視認性(見やすさ)は低下します。

加えて、ほとんどの物体は乱反射する形状なので、光を照らしても離れた場所からははっきりと認識することができません。

そこで、夜の視認性を高めるために、自然界に存在するもうひとつの反射現象「再帰反射」の原理を使った反射材が活躍します。

再帰反射

光が来た方向に再び帰る反射です。

どの方向から光が当たっても、光源に向かってはね返ります。

鏡面反射や乱反射とは違い、照らした光が戻ってくるので、照らしている側には明るく見えます。

猫の目がピカっと明るく光って見えるのも、再帰反射しているからです。

 

猫などの夜行性動物の多くには、目に光を反射させる層が存在するため、目が光って見えます。

そして、この明るく光る猫の目にヒントを得て開発されたのが、再帰反射材なんです!

 

再帰反射材とは

再帰反射の原理を使って作られた素材です。

一般的に反射材と呼ばれているものは、再帰反射材の略称です。

※光を反射させるもので、リフレクターと呼ばれているものも再帰反射材です。

再帰反射材には、大きく分けてガラスビーズタイプとプリズムタイプがあります。

微小なガラスビーズが敷き詰められたタイプです。

ビーズ内で屈折と反射をすることで再帰反射します。

ワークウェアやスポーツウェア、スニーカー、バッグなどに利用されています。

微小な三角錐のプリズムが緻密に配列されたタイプです。

プリズム内で反射を繰り返すことで再帰反射します。

道路標識や視線誘導標、トラックやバイク、自転車などに利用されています。

ガラスビーズタイプとプリズムタイプの違い

どちらも内部で屈折や反射をすることで、入射光と平行に反射光が出ていく仕組みですが、どちらのタイプも様々な種類があり、反射性能や耐久性、柔軟性などの特徴に合わせて使い分けされています。

2つのタイプの違いを大まかに分けると、以下のようになります。

・ガラスビーズタイプ

柔軟性があり加工がしやすいため、衣料品などに利用されている。

・プリズムタイプ

反射性能と耐久性に優れているため、道路標識などに利用されている。 

 

再帰反射材で夜の視認性が高まる!

再帰反射材の反射光は、光源に近いほど明るく見えます。

車のドライバーはヘッドライトの近くにいるため、ヘッドライトに照らされた道路標識が明るく見え、安全に走行することができます。

また、再帰反射材を身に着けたり、ものに貼り付けたりすることで、ドライバーが人やものの存在をより早いタイミングで認識することができます。

夜の交通安全に

車を運転するドライバーにとって、道路標識や工事中の作業員などが見えやすくなり、安全な走行に貢献する再帰反射材ですが、夕方から夜間の外出時に身に着けることで、交通事故防止の対策に役立ちます。

ウォーキングやランニング、自転車、お子様の通塾、犬の散歩、ジム通い、通勤、町内の防犯パトロールなど...

再帰反射材の付いた服やバッグ、スニーカー、帽子、キーホルダーを身に着けたり、テープを貼り付けたりすることで、ドライバーに早めに存在を知らせることができます。

ドライバーから見て、再帰反射材を身に着けた場合は、身に着けていない場合よりも2倍以上手前で発見できるといわれています。※反射材の大きさや身に着けている位置、服の色や天候などによって変わります。

昼間は目立たないけれども、夜は目立つ再帰反射材。

目立ちたくない恥ずかしがり屋なあなたも、夜道では再帰反射材で目立つことを意識してみてはいかがでしょうか。

 

終わりに

再帰反射材の歴史は古く、車が普及し始めた1920年代のアメリカで、夜でもドライバーに見やすい道路標識が必要になったことから開発が始まりました。

1930年代に3M社がガラスビーズタイプの反射テープを開発し、1970年代にアメリカのReflexite社がプリズムタイプの反射テープを販売しました。

現在では世界中の多くの企業によって再帰反射材が作られており、反射能力と耐久性を高める改良が続けられています。

再帰反射材は、光源に向かって明るく反射することによって、世界中で人々の安全を守っている素材なのです。

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